音楽の世界にダンチョネ節というのがあります。
演歌のジャンルで、八代亜紀の舟唄なんかもダンチョネ節として広く知られています。ダンチョネ節の由来を探ってみることにしましょう。
ダンチョネ節発祥の由来を辿っていくと、海上での船による事故が浮かび上がってきます・・・。明治33年11月、東京商船学校の練習船であった月島丸が駿河湾で暴風雨に遭い沈没、122人が溺死するという痛ましい海難事故が発生しました。その悲しみを歌にしたのがダンチョネ節だったのです。
ダンチョネ節の語源は、断腸の思いという言葉にあります。
文字通り、腸がちぎれるほどに大変悲しい思いのことを断腸の思いと表現します。ダンチョネ節は断腸ネ、が転じた言葉だったんですね。
八代亜紀さんの「舟唄」の歌詞です・・・。
沖のカモメに 深酒させてよ いとしあの娘とよ 朝寝する ダンチョネ
断腸の思いという言葉には、ある傷ましいお話が残されています。
中国の書物にそのルーツを辿ってみます・・・。
晋の武将であった恒温が蜀に遠征して三峡まで来たとき、部下が子猿を捕まえ、船に乗せて揚子江を下りました。母猿は鳴き叫びながら岸伝いに百里余りも船を追いかけてきたといいます・・・。そしてついに船に飛び移ったものの、そのまま息絶えてしまったということです。
その母猿の腹を裂いてみたところ、腸がズタズタに断ち切られていたというかわいそうなお話です。
断腸の思いを味わった母猿の悲痛な叫びが、時代を経て商船学校の生徒たちの痛ましい思いになり、そして今なお、演歌の世界でダンチョネ節として歌い継がれているんですね。
断腸の思いを英語に翻訳すると、heartbreaking grief となります。